いつも、ではない(ここは強調しておこう)。
たまに。本当にたまに、だけど。朝、メガネをどこに置いたかわからなくなることがある。
こたつの上に置いて、そのあと、うっかり下に落としてしまっていたら、踏んで壊してしまうかもしれない。
そうなると一大事だ。
四つん這いになって、こたつの周りをうろうろすることになる。
なにしろ、物体から50センチ離れたら、もうすべてが、ぼんやりとした形しか見えない。すべてがソフトフォーカスの中にある。それくらいの視力だ。メガネのように輪郭しかないようなものは、にじんだ景色に溶けてしまう。
いつもは、そう長く探すことはない。5分もあれば見つけられる。朝起きて、両目にレンズをはめるまでの、ほんのちょっとした時間の出来事だ。
部屋中をさんざん探した挙句、着替えた上着のポケットから見つかることもある。だいたい、その程度のことだ。
今日は、やはり床に落ちていた。最初から床に置くことはない。何かの拍子に落ちたのだと思う。しかも、こたつの近くだったから、うっかりするとお尻に敷きそうな場所だった。あるいは、手をついて、ぐにゃり、とか。
とにかく無事でなによりだ。
さて、目玉を洗ってこよう。レンズを入れて、今日の世界を見てやろう。