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ぼくにとっての第28章。

この文章は、音楽家・岸本みゆうに書いた文章を、加筆訂正したものです。


1980年12月9日火曜日、ぼくは20歳になったばかりで、鳥取県西部にある米子市に住んでいた。

10月28日の誕生日には、下宿のきれいなお姉さんにカードをもらったんだ。「まっすぐに生きようと思うな 曲折多き人生も また美しいではないか」って書いてあった。好きだったな、そのお姉さん。ロマンスも何もなかったけど。

「きみ、作家になれる。文章を書くといいよ。」そんなことを言われたこともあった。ぼくが音楽をやっているって言うと意外な顔をされたんだった。

前の年に、高校を卒業したあと、東京の専門学校に行ったんだけど、続けるのがめんどうになって、退学届けを出して、鳥取に帰ってきた。

ちょうど親戚の建築会社で募集していたんで、大工の見習いをすることになった。その会社の下宿だった。

当時、その下宿に住んでいたのは、高齢の女性が二人と、近くのデパートに勤める20代の女性とぼくの4人。一軒家で、作り置きの料理の余りものを分け合うような、当時は、たぶんよくあった家族的な昭和な下宿だった。

自由に使えるキッチンが部屋の近くにあって、そのころ下宿にいるときはヒマだったので、ほぼ毎日自炊をしていた。その日の夜は日曜日に作ったカレーを温めて食べた。大きな深い鍋を買ってきて、3日続けてカレーを食べることも珍しくなかったんだ。

仕事はきついこともあったが、みんな優しい人ばかりで、楽しんでやってた。昭和56年(1981年)が酉年(とりどし)ということで、雪の多い冬だったが、境港に近いところで、人が住めるくらいの大きな鳥小屋の建築を手伝っていた。

当時は、インターネットも携帯電話もない。目覚まし時計代わりに使っていたラジオから、そのニュースが流れてきた。ぼくの中に世界が止まったような感覚があった。

「12月8日、ニューヨークの自宅前で、ジョン・レノンが銃で撃たれて亡くなりました。」

記憶は今でははっきりしていないけれど、泣きはしなかったと思う。ただ、体じゅうのいろんなところに穴ぼこが開いたような感じがした。

ぼくが会社を辞めて下宿を出たのは、翌年の2月だった。

マーク・チャップマンが開いたのが、「ライ麦畑でつかまえて」の第27章だったのだとしたら、もうその章は終わったと思う。今から始まるのは、第28章だ。

これから新しい世界が始まる。始まらないといけないと思ってる。

(ジョン・レノンの写真はジョン・レノン – Wikipediaから拝借しました。)

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『アミ 小さな宇宙人』を読みました。

エンリケ・バリオス著、石原彰二訳、さくらももこ絵、徳間書店発行。

「うん。そうだよね。」って、納得しながら読みました。

今だから素直に読めたのかなぁ。

うんと子どもの頃に読んでいたらどうだっただろう。

そんな「たられば」を考えるのも意味のないことだけど。

出会う必要のあるときに、出会うものなんだろうなと思う。

ある方から、紹介されて読みました。

電子書籍で探したら、なくて。文庫本で出ているんだけど、単行本で読みたくて、中古の本を買いました。

鳥取県立図書館に行ったら、単行本も文庫も書架には並んでなくて、貸出可能な蔵書として保管されていたようだった。借りなかったけど。

クリックして拡大します。

3部作として、あと2作続編があります。

既に買ってあります。

読みます。

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音楽教室の本棚

オカリーナ三重奏「埴生の宿」

 これは、パソコンデスクの下にある棚、足元の空間です。ここには、本棚に収まりにくい背の高い本を並べています。本と本に挟まれてぎゅうっとサンドイッチになっているのは、コンパクトサイズのシュレッダーです。楽譜集など、音楽関係の本って、A4か、A4より一回り大きいサイズのものが案外多いんですね。それで、結果的にこの空間には音楽関係の本が集まってしまったというわけです。もちろん、これは一部です。

 テレビで学者さんや作家さん、あるいは政治家とかがインタビューを受けている背景に、図書館か?っていうくらい、背の高い大きな本棚にびっしりと難しそうな本が並んでいる、という風景を見たことを、ふと思い出しました。他の人の場合には、漫画のシリーズ本が順番に並んでいたり、本棚に入り切らない本が、ランダムに積み上げられている風景があったりと、本棚やその周辺を見ると、その人の日常の景色が見えるような気がします。

 私は、以前は文庫本などよく買って読んでいましたが、今は文芸書はほとんど買いません。繰り返し読む本以外は無駄に思えるからです。1回読むだけなら、図書館で借りるか、今はkindleでも、タブレットでも読めます。パソコン関係の専門書も最近はほとんど買わなくなりました。最新本の内容が半年後には古くなってしまいます。2〜3,000円払って買った本を束にして処分するのは、もう、もったいないですね。